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注意と安全に関する認知心理学的研究
目的 |
ヒューマンエラーの防止、ユーザビリティの向上のためには、人間の「注意」の仕組みを理解し、「どのようなデザインで見落としが少なくなるか?」を明らかにする必要があります。「“ウォーリーをさがせ!”のような視覚探索実験」「広告ポスターやポップアップ広告の印象評価実験」「風景写真の記憶実験」を通じて、「モノづくり」に活かせる視覚デザインを探求します。 |
概要 |
視覚の情報処理と注意
私たちは,眼が受け取る膨大な情報の中から,「注意」を向けて一部を選択して取り込んでいます。たとえば,運転中に車の陰から人が飛び出してくる,前の車が急ブレーキをかけるといった予想外の危険に対応するためには,重要な情報に注意を向ける必要があります。それでは,私たちはどのように注意を誘導しているのでしょう? 認知心理学の実験によって,この問題に取りくんできました。
視覚探索課題によるアプローチ
「注意」のメカニズムを調べるために,視覚探索課題がよく用いられます。認知心理学では,日常の行動場面で起こるさまざまな状況を「シンプルな課題」によって再現します。「何かを見つけるまで探すこと」を再現したのが視覚探索課題です。この課題は,複数の図形をディスプレイに呈示し,あらかじめ決められたターゲットを探してもらいます。ターゲットを見つけるまでの時間を測定することで,ターゲットに注意が向きやすい(向きにくい)のはどのような時か?を検討し,そのメカニズムを解明します。
注意の抑制(視覚的印付け)に関する研究
注意をターゲットの位置に誘導するためにどのような方略が用いられているのでしょうか? たとえば,ターゲットに注意を誘導するためには,ターゲットが出てきそうな位置や,予想したターゲットの色に対して構えておくことが効果的です。運転中に危険を予測し,その位置にあらかじめ注意を向けておくことで,危険に対してすぐに行動することができるでしょう。
しかし,ターゲットに対する情報が不足しており,十分に構えておくことができないこともあるでしょう。その時に有効な方略として,「ターゲットが出てきそうにない位置をあらかじめ候補から外しておくこと」が知られています。そうすることで,ターゲットが出てくる候補を絞って,すぐに行動できるように構えておくことができます。この方略のことを「注意の抑制」と言います。注意の抑制の1つとして知られている「視覚的印付け (Visual marking, Watson & Humphreys, 1997) 」について研究をしてきました。
なぜこの研究をしたの?
注意の誘導を最適化するメカニズムに興味があったから
注意の抑制(視覚的印付け)は,ターゲットが出現する可能性が低い位置に注意が向くことを抑制し,注意の誘導を最適化するメカニズムです。私たちの視覚のシステムは,限られた心的なリソースをうまくやりくりして,重要な情報に注意を誘導していると考えられます。
注意の「死角」にも興味があったから
注意の抑制のように「ここにはターゲットが出ないだろう」という位置を候補から外すことは,注意が向きにくい状態も作ってしまう可能性があります。このような注意の「死角」にもし重要な危険が潜んでいたとすると,大きな事故につながってしまうかもしれません。注意の抑制現象を研究上の道具(ツール)として利用して,注意の死角における見落としを調べることにも興味があります。
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関連サイト |
注意と安全に関する研究
認知科学研究室
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代表者、担当組織 |
大杉尚之 |
担当学部 |
人文社会科学部 |
連絡先 |
tosugi@human.kj.yamagata-u.ac.jp |
関係者、共同実施者 |
【大杉 尚之】 |
このプロジェクトを支援 |
山形大学基金(学部等への支援) ※「学部等名」にプロジェクト名を入力願います。 |
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