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しぐさのコミュニケーションに関する心理学的研究

目的

視線、表情、動作といった非言語的なコミュニケーションが対人認知に及ぼす影響を検討します。特に、日本(東洋)の文化圏において日常的に行われているお辞儀、うなずきといった動作に注目した研究を行います。「お辞儀をすると、その人の魅力はアップする?」「よくうなずく人は性格が良くみえる?」「面接では視線はどこに向ければいい?」このような問題に認知科学的な手法で取り組みます。

概要

第一印象に関する研究
私たちは人物の第一印象(例えば,魅力)をどこで判断するのでしょうか?もちろん顔の見た目は影響しますが,それに加えて,視線,表情,身体の動きも第一印象に影響します。相手にどのように関わろうとしているかを知らせるサインであるからです。たとえば,視線と表情からその人物が関心を向けた対象にどのような感情を抱いているかを知ることができます。このような様々な社会的なサインの中で,「お辞儀」や「うなずき」といった動作が人物の印象に及ぼす影響について検討をしてきました。

お辞儀で第一印象が変わる?
私たちは人と出会ったとき,人間関係を円滑にするための動作を行います。この動作は「あいさつ」と呼ばれており,世界共通の行動ですが社会や文化によって様々な形態があることが知られています。西洋文化圏ではお互いの手を軽く握り合う,「握手」と呼ばれる動作が行われます。東洋文化圏(日本)では相手に向かって腰を折り曲げる,お辞儀と呼ばれる動作が行われます。
お辞儀が印象形成に影響を及ぼすことは一般的に信じられているものの,実験的な検討はほとんど行われていませんでした。

お辞儀の効果を実験的に検討
お辞儀が顔の主観的な魅力におよぼす影響について検討しました。 3Dのコンピューターグラフィックス(CG)モデルを用いて,モデルがお辞儀をした後に,そのモデルの魅力を評定する実験を行いました。その結果,お辞儀をした条件(お辞儀条件)の顔の魅力評定値が静止したままの統制条件に比べて大きく上昇しました。その後の実験で,屈曲,静止,伸長の時間も重要で,礼三息(れいみいき:お辞儀をするとき,吸う息で上体を倒し,吐く息の間は止め,吸う息で上体を起こす)のタイミングでお辞儀をすることで,魅力上昇効果がさらに高まることを明らかにしました。

写真を用いたお辞儀効果の検討
顔写真をディスプレイ上に呈示し,お辞儀のように写真の上辺を前方に傾かせ,元の角度に戻しました(お辞儀条件)。 顔写真を傾かせるというシンプルな呈示方法でも魅力の上昇効果が生じました。その後の実験で,写真が単に傾いているのではなくお辞儀をしていると見る必要があること,顔特有の効果であること,礼儀正しさや従順さの印象と密接に関係することをつきとめました。 本研究に対し日本心理学会から学術大会特別優秀発表賞が授与されました。

うなずきと首ふりで第一印象が変わる?
うなずきは相手の意見の「受容」や「同意」,首ふりは「拒絶」や「否定」を意味しています。この2つの動作の意味は世界の多くの地域で一致しています。また,うなずきは会話の流れを調整する機能もあり,聞き手のうなずきにより話し手の発話時間が変わることが示されています。それでは,単にうなずき,または首ふりをしただけでその人の印象は変わるのでしょうか?

うなずきと首ふりが顔の主観的印象(好ましさ,近づきやすさ)に及ぼす効果を検討しました。3DのCGモデルを用いて,モデルがうなずきまたは首ふりをした後に,そのモデルの好ましさと近づきやすさを評定する実験を行いました。その結果,うなずきをするモデルの好ましさ,近づきやすさ評定値が静止した統制条件や首ふり条件よりも上昇しました。
うなずきが人物の印象に影響する理由として,動作と態度が密接に関連していることがあげられます。うなずきながらメッセージを聞くとその内容に肯定的になり,首をふりながら聞くと否定的になることが報告されています。このような動作と態度とのつながりはうなずきや首ふりをした場合だけでなく,その動作を見た場合にも影響すると考えられます。

なぜこの研究をしたの?
日常生活で感じた「あたりまえ」「あるあるネタ」を実験的に検討したかったから
心理学の研究では,「意識できない心的過程」を明らかにした研究の方が注目されがちです。その一方で,「お辞儀をすることは大切」「よくうなずく人は良い印象」という日常生活での「あたりまえ」「あるあるネタ」をシンプルな実験課題で再現する研究も面白いと思います。特に,「数量化」することでさまざまな状況で,異なった文化,年齢の人々に対して実験を行い,比較することができます。

関連サイト

しぐさのコミュニケーション

認知科学研究室

代表者、担当組織

大杉尚之

担当学部

人文社会科学部

連絡先

tosugi@human.kj.yamagata-u.ac.jp

関係者、共同実施者

【大杉 尚之】

このプロジェクトを支援

山形大学基金(学部等への支援)
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