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「つらい思いをさせないゲノム検査」のために ~山大ゲノム管理室の挑戦 2nd season~
目的
~ 検査の「数」から検査の「質」へ ~
がんゲノム検査は保険承認5年目を迎えておりますが、未だに多くの患者さんが検査を受けることなく亡くなっております。重要な検査ではあるものの9割の患者さんは治療提案が無いという厳しい現実を突きつけられるだけでなく、さらに一部は遺伝性腫瘍の可能性を告げられるという、取り扱いが難しい検査です。そんな中、山形県は東北・新潟地区で人口当たりの出検数が唯一、全国平均を大きく上回り、注目を集めています。山大ゲノム管理室コアメンバーは、検査を受けずに亡くなっていく患者さんが一人でも減るように幅広い活動を行い、様々な場で紹介させていただきました。ですが現在は、東北で3つしかない検査完遂可能施設の1つとして、ただ単に「検査数」を増やすのではなく、検査と向き合う患者さん・御家族そして検査に携わる医療スタッフの「気持ちのつらさ」を減らしたり、ゲノム検査データから「未来の患者さんを救う」ような山形大学の学生研究支援を開始したりなど、「きもち」や「未来」へつなげられる、単なる検査支援に留まらない、さらに高い次元の活動への取り組みを展開し実績を得て参りました。
概要
前回の受賞を糧に、検査の「数」だけでなく「質」の向上、そして未来の患者さんを救えるよう、さらに活動を発展させて参りました(新たな活動の一部を紹介します)。
◆「つらくない」ゲノム検査のために ~ゲノム検査へのコミュニケーションスキルトレーニングの応用~
ゲノム検査は必須の検査にもかかわらず9割の患者さんは、これ以上の治療が無いという現実を突きつけられ、さらに一部の患者さんは遺伝性腫瘍の可能性を告げられるという、余命の短い患者さんや支える家族にとって過酷な検査といえます。さらにそれは、患者へ検査を紹介し、検査結果を伝える医師・看護師・事務員・技師といった医療スタッフにとっても同様で、スタッフ自身の気持ちの辛さにつながるため、検査の拡がりという視点でも重要な未解決の課題でした。
そこで、悪い知らせの伝え方である「SHARE法」を応用したコミュニケーションスキルトレーニングを用いたゲノム医療教育を行う活動を開始し、多くの医療機関で活動し受講者は200名を超え、多くのスタッフから負担軽減につながっている旨の回答を得ております。2022年ファイザー社公募助成「がんゲノム医療に関する環境整備を推進する為の取り組み」へ地方国立大学で唯一の採択(助成総額220万円)を受けるだけでなく、2023年MSD社(公募型)医学教育事業助成「Precision Medicineにおいて、バイオマーカー検査に紐づく遺伝医療の理解向上のための教育事業」へも採択(助成総額198万円)されるなど、山大ゲノム管理室の各種活動は対外的に非常に高い評価と注目を受けるに至っています。
◆未来の患者さんのために ~山形大学学生によるゲノムデータベース研究支援~
患者さんのがん遺伝子の情報や、遺伝性腫瘍の情報、おおまかな治療経過など、本邦のゲノム検査の結果の99%以上は国のデータベースであるC-CAT(Center for Cancer Genomics and Advanced Therapeutics)に登録されております。大学組織は無償で利用することができますが、セキュリティや倫理面、実際のデータ運用など多くのハードルがあります。そこで、私たちは、未来の患者さんを救うために研究活動を行う有志学生への研究支援を行っております。課題解決につながる臨床疑問の設定から倫理審査委員会へ提出する書類作成や、C-CATとの手続き、データベース操作や統計解析など多くの支援を無償で行っております。既に各種学術集会での報告をはじめとして、多くの場で研究結果の報告を行っており、特に「肉腫の治療成績とゲノムステータスの関係」などゲノムデータベースをフル活用した研究成果は日本臨床腫瘍学会などで高く評価され、学生研究としては異例である英語発表での公募演題に採択されるなど注目を集めています。
また、本研究支援を基として、2023年度の本学ダイバーシティ推進室の採択を受け、飯田キャンパス初の女性研究者裾野拡大セミナーの開催にもつながっています。
◆最新の検査を適切に、どこよりも早く ~日本の新規ゲノム検査のトップランナーとして~
当院エキスパートパネル(専門家会議)での検討は1000件を超え、本邦のゲノム医療の中での立ち位置を築いてきていますが、当院のさらなる強みは新規検査へいち早く着手できることです。実際に、過去に開始されたFMI社FoundationOne Liquidだけでなく、2023年に開始されたガーダントヘルス社Guardant360やコニカミノルタ社GenMineTOPなど新規に開始された3検査全てで当院が本邦初出検しているだけでなく、新規検査の中で高い導入時のシェアを占めています。新規検査にはそれぞれ強みがあり、例えば他院からの相談症例で、これまでの検査では検出できない難しいケースであったものの、新規検査のGuardant360を用いることで新規治療につながる検査結果を得ることが出来た例など、地方の病院であるにもかかわらず新たな検査を積極的に取り入れ、体制構築を速やかに行うことで実際に患者さんの救済につながっている当院ゲノム管理室の取り組みは、本邦の医療関係企業から高い注目を集めています。
過去に支援いただいた活動支援金を基に、保冷庫を購入していたことも、保冷が必要なRNAパネルの開始に際して、いち早いスムーズな出検につながり、多くの患者さんの恩恵に繋がりました。
この2023年4月にゲノム検査を完遂できる指定病院の再審査に伴う入れ替えがあり、一部の病院で検査完遂の資格を喪失した一方で、多くの支援と理解のもとで当院は継続して指定を受けることができました。東北で僅か3つの検査完遂可能病院の1つとして力を尽くし、使命を果たすべく努力しております。
その他にも、全ゲノム検査への準備活動や、他県でのゲノム検査支援、YU-COE研究拠点との連携など産学連携も視野に幅広い活動を行い、地域の持続可能な発展へ貢献できるよう努力しております。
主な活動メンバー 医師(鈴木(修)ら)、薬剤師(小倉ら)、看護師(鈴木(理)ら)、アドミニストレイティブアシスタント(芦川ら)、事務員(鏡ら)
コミュニケーションスキルトレーニングを応用したゲノム教育プログラム(ファイザー社ゲノム教育助成)
ゲノム検査の面談の様子、学生研究の英語での学会発表の様子、制作したスキルトレーニング動画の一部、当院での検査検討数の推移(2023年は予測)
代表者、担当組織
ゲノム管理室コアメンバー
担当学部
医学部
連絡先
s-suzuki@med.id.yamagata-u.ac.jp
このプロジェクトを支援
山形大学基金(学部等への支援) ※「学部等名」にプロジェクト名を入力願います。
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